餡のいろ

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映画『この世界の片隅に』すずさんにみな癒される

こうの史代の同名マンガを原作として2016年に公開されたアニメ映画。2019年のこの夏、NHKで地上波初放送されたものを鑑賞した。
太平洋戦争下の呉が舞台で、絵を描くのが好きでボンヤリ(おっとり)した少女すずが呉に嫁ぎ戦時下を強く生きていく姿が描かれている。
ボンヤリと言われているけれど、かなりの働き者で、誰とも角を立てず受け入れ、明るく過ごす、すずは理想の愛されるお嫁さんで癒される。

映画冒頭のすず(のんさん)の声が想像よりも幼く感じたものの、方言やすずのおっとりおおらかな性格がわかってくるとピッタリだと思った。

見ていられないような辛い描写が少なく、戦時下の日々の生活を明るくたくましく送る姿は、ややもするとこちらも戦争の理不尽さを忘れてしまいそうになる。でもその分ちょっとした時に大切なものを失ったことを悟ってしまう喪失感・悲しみもじんわりと感じさせられる。

ストーリーも、キャラクターも、絵のタッチもやさしく、もっとすずさんを知りたくなって見た次の日には原作を買いに行った。原作の細かい書き込みがなかなかよい。

 

火垂るの墓とかはだしのゲンとか戦争を背景にしたアニメは大概は辛すぎて泣いてしまうのだけど、この映画は泣かなかった。なんでだろう。ほとんどの映画は主人公またはその近しい人物が理不尽な酷い扱いを受けたり、致命的な怪我や病気をしたり、死んでしまったり、その姿がより具体的に絵になっていて泣かずにはいられなくなってしまう。
この作品では、兄が亡くなった時、親が亡くなったとわかった時、すずが片手を失った時、妹のアザを見たとき、辛いはずの場面の心の動きを深堀せず、その代わりにその事実と共に、生活していく中でその事実を受け入れていく人々の姿が、ふとした場面でジンワリ胸が痛くなる。泣かないですむのは助かる。もう一度見たくなる。

 


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